作業療法の対象となる方々は、頭の病気(脳出血や脳梗塞)や、骨折などの運動障害、また認知症や老年期障害から身の周りの事(食事・トイレ・更衣・入浴・家事動作)などが出来なくなった、あるいは不自由を感じている方々を対象にリハビリを行います。
そのような方々に対し、機能の回復・維持、また代償による適応訓練を行い日常生活動作の自立、安定を図ることや一日の生活リズム、精神面の安定、生活の質の向上を図ることが作業療法士の仕事とされています。
機能回復を目指した治療を創作活動・作業活動などを通してリハビリを行います。創作活動の種類としては、皮細工・籐細工・編み物・貼り絵・絵画・手芸などを用い指先の細かい動作や構成能力などにアプローチします。
また日常生活動作をどのように行っているか調べ実際に訓練を行い、その中で動作の獲得や行いやすい方法を指導します。また機能そのものに対しても治療を行い、ADL動作の獲得に努めます。
治療を行っても後遺症が残ってしまった場合には、残された機能を最大限に活用し身の周りの動作のために、その方に合った訓練・指導を行います。また、介助道具の作製・福祉機器の紹介なども行います。このように、作業療法士は対象者の方々がより充実した日常生活を送れるように訓練・指導を行っていきます。
人の生活では様々な場面において記憶・注意・言語・行為・空間認知等、複雑な脳の機能を用いて社会生活を行っています。それは成長や経験により育まれた人間特有の脳の高次な機能であると言えます。
しかし、脳梗塞や、頭部外傷等の脳損傷により高次元の脳機能(認知機能)の障害が出現することを高次脳機能障害と言います。
障害名 | 症状 |
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注意障害 |
必要なものに意識を向けたり、意識を集中させたりすることが上手くできなくなった状態 注意散漫 一つのことに集中できない すぐに他者の会話に入る 一度に二つ以上のことを同時に行うと混乱する ぼんやりしていてミスが多い |
記憶障害 |
古い体験や知識が思い出せなくなったり、新しいことが覚えられなくなった状態 繰り返し同じことを質問する 自分のしたことを忘れてしまう 人の名前や作業の手順が覚えられない |
失語 |
自分の話したいことを言葉に表現できなくなったり、相手の話が理解できなくなった状態 発話の障害(ブローカ失語):理解は可能。発声、発話が困難、思うように話せない。 聴覚的理解の障害(ウェルニッケ失語):発話は可能。語の意味理解、文法理解が困難 |
失行 |
運動可能であるにもかかわらず、目的を伴った運動が不可能な状態 物品使用の障害(持ち方・運動の方向がわからなくなる) 櫛で髪がとけない、はさみが使えない 系列的操作の障害 急須でお茶をいれられない、歯磨き粉をつけ歯をみがく手順に誤りがある その他 本のページを上手くめくれない、日常の動作がぎこちなくなる、模倣動作ができない |
半側空間無視 |
一側方向からの情報や感覚(視覚・聴覚・体性感覚)を認識できなくなった状態 一側方向に注意が向きやすく主に左方向に見落としがある 御飯の左半分を残す、または各器の左半分のみ残し右側だけ食べる |